茶道具 翔雲堂


ひと口知識

※内容に間違いがあるかもしれませが、ご了承ください。
また、ここの文章に関しては、質問等は受け付けていません。ごめんなさい。

煙草入(莨入)ってこんなの

煙草入は、刻みたばこを入れるのに用いる道具で、
唐物では青貝入・象牙・堆朱・堆黒・ク利・
存星・金馬・独楽・竹根などがあり、
香料や薬味入を見立てたものなんだそうです。


■刻みたばこ
煙管用の刻みたばこは、たばこ専売化以降も製造が続けられてきたそうですが、
需要の減少に伴い銘柄の廃止が行われ、1979年の「ききょう」という銘柄の販売終了をもって、
国内製造品は消滅したそうです。

その後、旧来からの愛好者や歌舞伎を始めとする伝統芸能従事者からの、
刻みタバコの供給要望が強かった事から、
急遽マカオからの輸入品「山吹」を流通させようとしたそうですが、
刻みの細さや葉の喫味などの面で「ききょう」には及ばなかったようです。

そして、1985年、煙管用の新たな国内生産品「こいき(小粋)」が販売されるみたいです。
この「こいき」は、現在も世界的にも抜きん出たレベルを持っているそうです。
原料は、松川葉・達磨葉・出水葉・指宿葉・水府葉の全五種の
煙草葉によるブレンドのようです。

刻みたばこは、髪の毛の細さ(0.1mm)に細く刻まれていて、
これが紙封の上で箱詰めになっているみたいです。
使用している葉は国内産で、「こいき」の製造には明治中期に考案された、
刻みタバコ製造機械「酒井式細刻機」が使用されているとか。

江戸時代の手刻み包丁による製法以来続く、
日本の伝統的な刻みタバコの形態を現在に伝えるものなんだそうです。


■紙煙草入
煙草入には、紙煙草入(畳紙:たとう)というものもあり、
檀紙・奉書・唐紙・薬袋紙など美濃紙半紙大を二つ折りにし、
さらに三つ折りにして、上下を後ろに折り込んだものみたいです。

紙煙草入には、紅葉・松葉・芦の葉などを張り込んだり、
漆絵・箔押したものなどがあるみたいです。

紙がたばこ入れの素材として用いられたのは、日本に喫煙が広まり、
刻みたばこが携帯されるようになってから間もなくだそうで、
徐々にその紙には、柿渋・桐油・漆・蝋などを塗る防水加工、
強度を与えるための皺加工、燻加工などが施されていったようです。

寛文5年(1665年)刊行の『京雀』に描かれた合羽屋は、
和紙に桐油を塗って防水加工したものを雨合羽として用いていたそうです。
絵の中には、雨合羽の端切れでこしらえたらしい小さな袋物が並んでいるのだとか。
このような素朴な袋物が、時を経るに従い凝った作りの紙たばこ入れに発展していくそうです。

天明元年(1781年)刊の黄表紙『突渡最早恵来栄(とっともはやえらいさかえ)』に、
「江戸ミやけにかミたばこ入をもらつたか、にしきもおよハぬゑらいものしや」
と、たばこ入れの品定めをする人の台詞があるのだとか。

さて、当時の人気作家、山東京伝(さんとうきょうでん)は、寛政5年(1793年)の暮れ、
江戸京橋に紙たばこ入れの店を開き商売を始めるそうです。
店を宣伝するにあたり、人気作家であるという立場を利用して、
自分の作品の紙面を割いて店の宣伝文を入れ、文才を生かしたチラシも作ったのだとか。
京伝の店でも革まがい紙や、縮緬蝋引き紙のたばこ入れを扱っていたそうです。

19世紀半ばになると、より耐久性を強めて革に似せた擬革紙が、
江戸橋四日市町の竹屋によって開発され、その擬革紙で作られた製品が人気を博すみたいです。

明治になると、この擬革紙の製法が応用され、
金属箔を押して艶をつけたものが壁紙としてヨーロッパに輸出されるようになるのだとか。

日本では、たばこ入れを毎日携帯するほどの日常品であるからこそ、
紙の加工技術が発達していったのですが、あまりに身近で手軽すぎたのか、
以降、日本では大切には扱われなくなるそうです。
当時の擬革紙製のたばこ入れはおろか、擬革紙の原紙さえも、
国内では、ほとんど現物を見ることができないとのことです。


■煙草入の文献
稲垣休叟著『茶道筌蹄』に
「タトウ紙 古来より用ゆ」
「挽物 如心斎このみ、槐木地」
「一閑オリタメ 宗全このみ」
「桑 如心斎このみ、長角しやくり蓋、内室へこのみ被遣よし」
「楽焼 宗全このみ、長角おとし蓋につまみあり、
香炉薬、こり蓋に取合す」
「椰子 如心斎このみ、かき合せの三つ入れにこのむ」
とあるそうです。

作品名:巻莨入
左:柿合松葉蒔絵
右:堤灯型独楽塗(売り切れ)
価格:3,000円
備考:紙箱入/木製

巻莨入
※画像を押すと拡大できます。
2014年12月6日〜2015年3月1日まで、
印傳博物館で、「印傳の莨入展」が
催されていたそうです。

甲州印傳は、鹿革に漆で模様付けをする、
独特な革工芸みたいで、
印傳作品・鹿革工芸品・漆工芸品を中心に、
関連する道具や絵画・書物等の資料約1500点を収蔵し、
テーマに合わせた展示をしているとか。


■莨入について
莨入は叺(かます)という刻み莨を納める袋の部分と、
煙管を入れる筒状の煙管袋から成るそうで、
一つ提げ莨入・提げ莨入・腰差莨入・懐中莨入、
等と呼ばれているとか。

腰に提げる形式や携行の方法によって、
様々な莨入が創られ、
着物に帯という服装の文化の中で、
大きく育ったようです。

素材には革・布・木・竹・貴石・象牙等の例も見られ、
金具や根付にも多くの材を用いて様々な装飾が施され、
当時の趣向を反映した装身具としてもてはやされたとか。

軽く丈夫な鹿革は、主に叺や煙管袋に用いられたようです。

鹿革に漆を塗る「地割印傳」「松皮印傳」等から、
徐々に「漆付技法」「燻技法」「更紗技法」によって、
模様や色が多様化し、
洒脱さを競い合う世相を反映して、
装飾も華やかになったみたいです。




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