茶道具 翔雲堂


ひと口知識

※内容に間違いがあるかもしれませが、ご了承ください。
また、ここの文章に関しては、質問等は受け付けていません。ごめんなさい。

茶壺(葉茶壺)ってこんなの

茶壺は、抹茶になる前の葉茶「碾茶」を入れる壺のこと
紙袋に入れた幾種類かの濃茶用の碾茶を収め、
その周りに「詰め茶」といわれる薄茶用の碾茶を入れ、
木製の蓋をし三重に和紙で包み貼りして封印するそうです。

茶壺は「葉茶壺」と呼ぶようですが、
挽き上げた濃茶を入れておく壺は「抹茶壺」とか「碾茶入」といい、
「大壺」の茶入ともいうとか。


■茶壺の歴史
古くは抹茶を入れる茶入を小壺、碾茶を入れる壺を大壺と呼んだそうです。
大きさは、だいたい高さ20〜50cmくらいありますが、普通は30cmくらいだとか。
多くは四つ耳があるようです。

茶壺の語の初出は中原師守著『師守記』に、
1340年の正月三日条に葉茶を引出物としたとあるとか。

また、玄慧法印著『喫茶往来』には
「茶壺は各栂尾・高尾の茶袋。」
とあって、喫茶の亭に茶壺を飾ったそうです。

中世の日本、釉薬のかかった壺は輸入品しかなく、
フィリピンのルソン経由でもたらされたものを「呂宋(るそん)」と呼んで、
茶壺の中でも重要視したみたいです。

特に呂宋壺の中で文字・紋様のないものを「真壺(まつぼ)」と言うそうで、
室町時代には鑑賞の対象として最も重要視されていたとか。
六代将軍の足利義教は茶壺に「注連の縄」という銘までつけたようです。
その後、小間の茶の湯が盛んになると、その座を茶入に奪われていったみたいです。

『君台観左右帳記』では床飾りに用いなかったようです。

室町時代初期の『喫茶往来』には
「茶壺は各栂尾・高尾の茶袋。」
とあり喫茶の亭に茶壺を飾ったそうです。
当時は、茶会では鑑賞されたようですが、
茶入や天目茶碗のように書院の棚飾り用いられることはなかったみたいです。

信長・秀吉が書院の飾り道具に用いたことにより、
諸大名もこれに倣い争って茶壺を求め、
利休時代では茶器の中でも筆頭道具として尊重されたみたいです。

今では口切に使用するほかは装飾に用いられているとのこと。


■茶壺の種類
茶壺には、唐物・和物・島物・京焼があって、
唐物は呂宋・南洋・中国物など、
和物は鎌倉時代からの瀬戸・祖母懐物、室町時代かのら信楽・備前・丹波など、
島物は唐物と和物の中間、
京焼では仁清の色絵に代表されるものなどがあるみたいです。

茶壺は、呂宋壺を最上とし、
一般的には、銘印も文様ももたない四耳壺を「真壺(まつぼ)」、
肩に蓮華の模様と王の字の押型があるものを「蓮華王(れんげおう)」
とそれぞれ言うそうです。

文献的には1554年『茶具備討集』が初出で、
この押型も各種あり、蓮華の印のみだと「花壺(はなつぼ)」
色々な模様の様な印の押してある「清香(せいこう)」や「洞香」
などがあったようです。

ただ、「清香」の文字の印が最も多いため、
しだいに、文字のいかんを問わず印のある壺をすべて
「清香壺(せいこうつぼ)」と呼ぶようになったのだとか。

呂宋壺の名で総称される壺は、
多くは広東省を中心に中国南部で雑器として大量に焼かれたもので、
酒・香料・薬草などを入れ、
ルソン島を始めとする東南アジア各地に売られたようです。

彼の地でさまざまに利用されてきたものは、
桃山時代末期にルソン島から大量に輸入したものだそうですが、、
これ以前にも同種の壺は請来されていたみたいです。

『茶話指月集』に
「茶壺のなかで優れているものをもとは[真壺]といい、
その次を[呂宋]という。
文禄二年、堺の納屋助左衛門がルソンに渡って
真壺50個を持ち帰り、秀吉公にご覧に入れた。
秀吉公は、利休に品質によってランク付けさせ、
値段を決めて希望の人に下賎された。」
とあるようです。

ここで言う「真壺」は、桃山時代以前の唐物壺、
「呂宋」は、桃山時代以降にルソン島を経由して輸入された壺、
だそうですが、「呂宋壺」の増加に伴い混同され、
「呂宋」が輸入茶壺の総称となるとのこと。


■口切の茶事
口切の茶会の時、茶壺を小間に飾る説明は、
立花実山著『南方録』に詳しくあるようです。
○初入りのときに、掛物をかけてその前に飾れ。
○口覆と口緒を結ぶ紐までにせよ。
○成り行きで長緒の結びをするときは、目立たせるな。
○いろんな緒の結び方は、いかにも知ってる風でよくない。
○綱は普通かけないけど、口切でないときは、壺によってはかけてもよい。


久保長闇堂著『長闇堂記』に口切の茶事について、以下の話があるようです。


堺の藪内宗也が、利休を口切の茶事に招いたことがありました。

前夜、利休が前礼に行くと、応対に出た宗也は、
「かたじけないことです。どうぞお上がりください。
お茶を一服差し上げたく存します。」
と言いました。
利休が、
「明朝の口切ですから、ご遠慮しましょう」と言うと、
宗也は、
「明日は明日のことでございます。
どうぞお上がりください。」
と、利休を招き入れました。

茶室に入って一服喫するうちに、思いのほか話がはずんで、
ふと気がつくと、はや夜が明けはじめました。
利休は、それではと釜の水を改めてもらい、
朝まで居続けて、口切の茶事を快く済まされたそうです。


■茶の気
『南方録』に以下の話があるようです。

口切から始まり、正月・二月までは茶の気が強く保たれているけれども、
三月後半ころから衰えはじめ、四月になるとますます弱くなって、
五月雨となる梅雨のころは最も気が衰えた時期といえます。

だからこそ、釜の五音のうち、
煮え立った峠の松風の音の時が口切に相応し、
正月・二月になると雷鳴の熱さを超えた湯を使うことを心得るべきです。

四月以降になって茶の色も香も衰えているのに、
沸き立った松風の湯を入れると、茶の気が抜けるばかりでなく、
色も香も変化してしまいます。
だから、風炉の時期は、沸き立った湯に一杓の水を差し、
汲みまわして、煮え音がゆるんだところで茶碗に湯を入れれば、
湯相が柔らかになって、
衰えた茶の気をたすけて美味しい茶が点つのです。

夏に炉で茶会をする時も同様の考え方でしなければなりません。
これは台子の茶の秘伝としてきたことだと紹鴎が言われました。


■捨壺
立花実山著『南方録』に「捨壺」の話があるようです。


小嶋屋道察はすごく良い壺を買ったのですが、人に見せようとしません。
あるとき客が腰掛待合まで入ってから
「今日は皆、壺を見せてほしくてきたんだよ。」
と言ったそうです。
道察は、にじり口の脇に口覆だけして壺を転がして置いたそうです。
客は「床の間に飾って」と言ったのですが、
「床に飾るほどの壺じゃないから、そのまま見てほしい。」
と挨拶したとのこと。客から何度もお願いされ、最後には床の間に飾ったようです。
この趣向を他の人が感心して「捨壺」というのが大いに流行ったとか。
ただ、 千利休
「興味ある作意だけど、最初から床に飾るほうが素直だ。
捨壺は難しいから真似てなどするべきことではない。」
と言ったそうです。


■文献
『茶道筌蹄』に
「呂宋 むかしは是非真壺へ茶を貯へしなり。
夫ゆへに壺なき者は口切の茶の湯をなさざりしとなり。
尤呂宋を上品とす。
豊太閤の時代、真壺をもてはやしたるゆへ、
世間に少く不足なるに依て、左海の納屋助左衛門、
太閤の命をうけて呂宋へわたり、壺五十をとり来る。
利休是が品を定め、諸侯へわかちしなり。
蓮花王 呂宋の上品、かたに蓮花の上に王の文字あり。
清香 是も呂宋の上品なり、清香の文字あり。
瀬戸 信楽 千家にては、此三品 呂宋、瀬戸、信楽、を用ゆ。」
とあるようです。

『君台観左右帳記』に
「真壺は口肩うつくしく、肩にろくろめ二あり。
又ろくろめのなきもあり。
そうのなり、すそまでむくむくとなりよく候。
土薬は清香とさのみかはり候はず候。
清香は口よりなで肩にして、肩にろくろめおほく候はず候。
すそすはりにて細長くなりわろく、土薬は真壺にまぎれ候也。
よきは真壺にもをとらず候。」
とあるとか。

『長闇堂記』に
「葉茶壺の口覆い、昔はすみきらすして、
口の緒も長きを、利休すみ丸く、口の緒短くせり」
とあるそうです。

『茶式花月集』に口切の茶事について、
「樋或は戸押縁など、所々見合青竹に改る。
ちり箸、さい箸、蓋置、灰吹、青竹に改る。
所々戸溜り青竹に改る。
路地に松葉を敷。但ししきやう前に記。
手水鉢柄杓、内外とも新に改る。
路地水を打、塵穴に青葉を入、竹箸(青竹に改る)付置。」
とあるみたいです。

『南方録』に少々長いですが、口切の茶事について、
「書院に、床、違棚の下などに壺かざりて口切のことあり。
椀飯已前に取をろして口を切なり。
装束はづしたるとき、客所望して壺を見る。
茶師の印判を心付て見るなり。亭主請取て勝手へ持入て口切もあり。
また客前にて、小刀を以て切もあり。切はなしにくきものなり。
刀目を入るまでにてよし。前の方の印は切残すこと口伝なり。
さまざま仕方あり。書付がたし。
草庵ていの口切は火相心得べし。火をつよくすべし。
客座入あらば、亭主出て一礼すみ早々挨拶して壺をさばき、
壺を客より請て見ること勿論なり。
口切の時は、大方はだか壺に口緒、口をゝいまで然るべし。
口緒も半切のたやすきがよきなり。手早にさばくこと本意なり。
見物すみて道具だゝみになをし、
封をさらりと、しるしばかりに切て勝手へ持入、
壺家のふたを出して見することもあり。
凡はそれにも及ばず、香炉など出し、待遠になきはたらきすべし。
主は茶才判してひかする。
さて程を見合炭をして、懐石を出すなり。中立等別義なし。」
とあるようです。


■関連ページ
また、
「口緒」について

「口覆」について

「網」について

「乳緒」について

「長緒」について
は、それぞれ別ページで説明しています。

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