茶道具 翔雲堂


ひと口知識

※内容に間違いがあるかもしれませが、ご了承ください。
また、ここの文章に関しては、質問等は受け付けていません。ごめんなさい。


なお、一部の作品、販売しています。

莨盆(煙草盆)ってこんなの

まずは、煙草についてから説明します。
煙草の起源は、十六世紀はじめのアメリカ大陸で生まれたと考えられているそうです。
1543年から始まる南蛮貿易で嗜好品として「煙草」が渡来するみたいです。
他にも、
食料:砂糖・パン・カボチャ・トウモロコシ・サツマイモ・ジャガイモ・スイカ
嗜好品:ブドウ酒
その他:せっけん・めがね・ガラス・・ボタン・カルタ・時計
などなど、今では普通にあるものが渡来しているようです。

十六世紀末、日本でも喫煙の風習が広まり、当時の「かぶき者」と呼ばれるならず者たちが、
徒党を組むシンボルとして使われるまでになると、
江戸幕府が煙草の禁令を出すようになるそうです。
また、農家も米より煙草を作るようになり、こちらも煙草の禁令を出すみたいです。
日本の喫煙風俗は、模倣から始まり、しだいに日本風に変化し、
海外に例を見ない独特なものとなったみたいです。
「きせる」なんかは日本独自のもののようです。
そんな江戸時代に登場するのが「莨盆」です。


■莨盆とは
莨盆は、最初、香盆を見立てたもので、香炉を火入に、シュ殻入を灰吹、香合を煙草入とし、
盆の前に煙管を二本置くのは、香箸に見立てたものだったようです。

喫煙に必要な火入・灰落し(灰吹)・煙草入・きせるなどを
ひとつにまとめた莨盆は、刻み煙草の喫煙に便利なようにと改良され、
機能的に優れたものとなっていくようです。

盆形以外に箱形のものも作られるなど、さまざまな意匠が考えられ、蒔絵なんかもあったみたいです。
たとえば、持ち運びやすくした「手提げ莨盆」や、風で灰が飛ばないようにした「風覆手付き莨盆」、
火入が回転する「蒔絵四方形手付き莨盆」、小物入れをつけた「寝覚形莨盆」や「箪笥形莨盆」などなど。

この莨盆、当然、 利休 の時代にはないわけで、江戸時代に入り 宗旦遠州宗和 あたりから
好み物の煙草盆が登場し、江戸後期に莨盆一式が茶事の道具として一般的になったようです。

茶事においては、寄付、腰掛、席中では薄茶が始まる前に持ち出されるそうで、
濃茶席と懐石中には出さないとか。
また大寄せの茶会では、最初から正客の席に置かれるようです。

三千家の特徴として、向って左に火入、右に灰吹を入れ、
煙草入と煙管は一組で用いられ、用いる時は正式には煙管二本を莨盆の前へ縁に渡して掛けるそうです。
武者小路千家では、その他に灰吹の右に香火箸(香箸)を添え、火入の下に敷き紙を敷くようです。
表千家では莨盆に敷き紙を、裏千家では敷き紙自体敷かないという違いがあるみたいです。

唐物には蒟醤・青貝・漆器・藤組など、和物には唐木・漆器・木地・一閑張・篭などがあるそうで、
大名好みのものは、飾り金具、塗蒔絵、透し彫り、唐木彫りなどの等手の込んだ細工物が多いのに対し、
茶人好みは桐や桑等の木地で形も簡単なものがほとんどだとか。


■莨盆の文献
『茶道筌蹄』に
「鯨手 如心斎好、真黒ぬり」
「こり蓋 原叟このみ、縁溜ぬり、底鏡黒ぬり」
「絲巻 如心斎このみ、真黒ぬり、絲巻のすかし爪紅」
「三つ入 元伯好、桐木地、黒掻合せ」
「舟形 宗全このみ、こり蓋の深き形、真黒塗」
「くじら手 如心斎好、桑木地」
「つぶ足 如心斎このみ、桑木地」
「半庵好 葉入角、桑手も共木にて唐草すかし」
「行李蓋 原叟このみ、真ぬりの通りにて桑きじ」
「覚々斎好 中段にとまりあり、げす板に火入灰吹切こみ、
下へ煙草入をいれる、桑きじ」
「絲巻 如心斎このみ、しんぬりの通りにて桑」
「木瓜 元伯好、一かん張、手付」
「釣瓶 元伯このみ、大小あり、今用るは大の方」
「行李蓋 原叟このみ、しんぬりの通りにて一かん張」
「三つ入 一閑張、手なきは元伯このみ、
竹の折手あるは宗全このみ」
「つぶ足 如心斎このみ、一閑張」
などとあるようです。

『茶式湖月抄』に
「たばこ盆の事は、利休時代まで、稀々に用いしゆえ、莨盆一具などなかりし也。
やうやう九十年来、世人なべて用ることとなれり。
利休煙草盆あり、これは利休の名をかりたるなるべし。」
とあるそうです。

『目ざまし草』に
「芬盤といふものは(ある説に、志野家の人、某の侯と謀て、
香具をとりあはせたりといへり)、香具を取りあはせて用ひしとなり。
盆は即ち香盆、火入は香炉、唾壷はシュ燼壷、煙包は銀葉匣、
盆の前に煙管を二本おくは、香箸のかはりなりとぞ。
後々に至り、今の書院たばこ盆といふ様の物出来ると也。」
とあるみたいです。


■本ホームページでは
また、
「火入」について

「煙管」について

「灰吹」について

「煙草入」について

「香箸」について
は、それぞれ別ページで説明しています。


読み:ふばこたばこぼん
作品名:文箱莨盆(一閑塗)
作者:北村葵春

文箱莨盆
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文箱とは、書状などを入れておく手箱、または、書状を入れて先方に届ける細長い箱のことで、 文筥・文笥・文笈などとも書かれるそうです。
平安時代中期に作られた辞書『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』では、 文笈の「笈」を不美波古(ふみはこ)と読み、「書を負う箱なり」とあって、 古くは書籍を入れて担い運ぶ箱を指していたとのこと。
中世以降は、主に書状を入れて往復する細長い箱、または、 書状や願文などを入れておく箱を指すようになったみたいです。
江戸時代には、蒔絵や螺鈿などの美しい飾り文箱を嫁入り調度品として取りそろえるようになり、 大きさや用途に応じて、大文箱(長文箱)、小文箱、半文箱、五節文箱(五節句の絵があるもの)、 贈答文箱、常用文箱などと呼び分けられるようになったそうです。

一閑塗は、漆塗の一種で、 薄美濃紙などの和紙を糊漆で貼り、薄く刷毛で漆を塗り紙肌を残して仕上げたもののようです。
素材を貼った塗には、他に白檀塗や布目塗(布張塗)なんかがあるそうです。


作品名:桑つぼつぼ透莨盆
価格:8,000円
備考:紙箱入

桑つぼつぼ透莨盆
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桑の木質はかなり硬いそうで、磨くと深い黄色を呈して美しく、しばしば工芸用に使われようです。
ただ、銘木として使われる良材は極めて少ないらしく、
「島桑」という伊豆諸島の御蔵島や三宅島で産出される桑ぐらいしかないみたいです。
江戸時代から江戸指物に重用され、国産材の中では最高級材に属するそうです。

桑の弓を使って、古代中華文明圏では男子の立身出世を願い、男の子が生まれた時に厄払いとして、
家の四方に向かって桑の弓で蓬の矢を射たそうです。
日本に伝わって男子の厄除けの神事となったとか。

中国においてクワは聖なる木だったみたいで、
中国の地理書『山海経』には、
10個の太陽が昇ってくる扶桑という神木があったが、
「げい」という射手が9個を射抜き昇る太陽の数は1個にしたため、
天が安らぎ、地も喜んだと書き残されているそうです。

嫌なことや災難を避けようとして唱えるまじないとして
「くわばら、くわばら」がありますが、漢字だと「桑原」と書きます。
この桑原、桑原村の井戸に雷が落ち、蓋をしたところ、
雷が「もう桑原に落ちないから逃がしてくれ」と約束したため
という説から来ているみたいです。


作品名:桐木地莨盆(つぼつぼ透かし)
作者:貞斎
備考:(淡々斎好/紙箱)/桐箱入

桐木地莨盆(つぼつぼ透かし)
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つぼつぼは、直径一寸位の壷形をなした素焼で、つぼつぼと重ねて云うのは幼な言葉だそうですが、
それが一般に呼ばれているみたいです。

粘土を擂粉木の如きもので押し平らげ、手捻りで作ったもののようで、
轆轤や一定の型を用いていない。
井原西鶴の『好色盛衰記』には、
「稲荷の前つぼつぼ、かまかま作り売これも土仏の水あそび云々これ壺と釜となり。」
とあるそうです。

つぼつぽの利用方法としては、新築や席披きなどの物事の始めのお清めとして、
また、商家が家内安全・商売繁盛を願って使ったという説があります。


作品名:桐木地莨盆(銀杏透かし)
作者:清水晃樹
備考:鵬雲斎好写/桐箱入

桐木地莨盆(銀杏透かし)
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桐は、日本国内でとれる木材としては最も軽いそうで、
湿気を通さず、割れや狂いが少ないことから、高級木材として重宝されてきたようです。
また、発火しづらいという特徴もあるため、金庫などの内側にも用いられるみたいです。

桐は鳳凰の止まる木として神聖視されているそうで、
桐花紋として「菊の御紋」に次ぐ高貴な紋章、天下人たる武家が望んだ家紋、政権担当者の紋章
といったものに使用されているみたいです。

五七桐花紋なんかは、今でも、日本国政府の紋章、菊花紋に準じる国章、内閣総理大臣の紋章
などとして、ビザやパスポート、金貨の装飾とかに使われているようです。

清水晃樹は、氷見晃堂(ひみこうどう)宅に住み込み弟子として十数年修業、
その後、主に国宝・重要美術品等の修復を手掛けたりした人のようです。


作品名:一閑塗山道莨盆
作者:安本表雲斎
備考:幅29cm/高さ24cm/奥行21cm/桐箱入

一閑塗山道莨盆
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山道は、器の口辺が、あたかも山道のように凹凸をなすものだそうです。

ここでは、莨盆の種類と好みを一覧表にしてみようかと思います。
種類 好み
鯨手・真黒ぬり 如心斎好
絲巻・絲巻のすかし爪紅
鯨手・桑木地
つぶ足・桑木地
絲巻・しんぬりの通りにて桑
つぶ足・一閑張

こり蓋・縁溜ぬり・底鏡黒ぬり 原叟好
行李蓋・真ぬりの通りにて桑きじ
行李蓋・しんぬりの通りにて一閑張

三つ入・桐木地・黒掻合せ 元伯好
木瓜・一閑張・手付
釣瓶・大小あり・
今用るは大の方
三つ入・一閑張・手なき

舟形・こり蓋の深き形・真黒ぬり 宗全好

葉入角・桑手も共木にて唐草すかし 半庵好

中段にとまりあり・げす板に火入灰吹切こみ・
下へ煙草入をいれる・桑きじ
覚々斎好

三つ入・一閑張・竹の折手ある 宗全好

安本表雲斎は、京都の漆芸作家。陶芸家 秦玖山の師匠。


作品名:溜香狭間透莨盆(柿合塗)
作者:鳳斎
価格:10,000円
備考:紙箱入

溜香狭間透莨盆(柿合塗)
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香狭間(こうざま)は、格狭間とも書くようで、
上部は火灯形、下部は椀形の曲線から成る装飾的な刳(く)り形のものだそうです。
古くは牙象(げじよう)とか眼象(げんしよう・げじよう)などとも言ったみたいです。

柿合塗は、器物に柿の渋を塗り、 その上に黒・紅殻(べにがら)などの色をつけて漆の上塗りを1回だけしたものだそうです。


作品名:溜塗香狭間莨盆
価格:10,000円
備考:紙箱入

溜塗香狭間莨盆
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溜塗のもっとも一般的な色としては、あずき色のような、えんじ色のような色をしているそうで、
赤茶色や赤紫に近いときもあるとのこと。
ただ、色が重要ではなくて、
「表層に透明な漆(透き漆)を塗って仕上げたもの」をすべて溜塗と言うみたいです。

「あずき色」というのは、朱漆を塗ったあとに透き漆で仕上げることで表れる色調なんだそうで、
下に朱が塗ってあるから、これを「朱溜(しゅだめ)」と言うとか。

他に、紅溜塗・黄溜塗・木地溜塗などがあるようで、
漆の種類(ベンガラ漆・青漆・黄漆)や、
木地溜塗(木地呂塗)みたいに木地の上にすぐ透き漆を塗るといった違いがあるそうです。


作品名:溜塗香狭間莨盆
備考:サイズ小

溜塗香狭間莨盆(小)
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完全に話題が逸れますが、サイズが小さいと言えば、ドールハウスでしょうか。

最古のドールハウスは、紀元前のエジプト文明に遡るそうで、エジプトの遺跡から出土したみたいです。

「趣味としてのドールハウス」という意味では、
1507年にドイツ・ババリア地方のアルブレヒト伯爵が収集したものが最古になるそうで、
当時の街の様子を忠実に再現したそれは、
現在もミュンヘンの国立博物館にその一部が保存されているんだとか。

16世紀のドイツでのドールハウスは、女の子が生まれると情操教育の一環としてドールハウスを用いて、
テーブルマナーを身につけさせるのに役立てたようです。

19世紀になると「ニュールンベルグ・キッチン」と呼ばれる家事を教えるためのドールハウスが販売され、
鍋・竈・調理器具などが実用に耐えるように作られたそうです。

20世紀はじめには、現代よく目にする、ミニチュアのドールハウスが登場するみたいです。

1924年、英国のクイーン・メアリー(今のエリザベス女王のお祖母さん)のために、
国王ジョージ5世が国家プロジェクトとして、
「ミニチュアの架空のお住まい」を創るそうです。

5階建てのドールハウスには動くエレベーターを設置し、
車庫には5台のロールスロイスを収め、
蛇口をひねればお湯が出る給湯設備まで取り付ける。
地下のワイナリーには本物のヴィンテージ・ワインを注入したボトルを貯蔵し、
シーツやピローケースなどのベッド・リネンには王室のしるし「R」の頭文字を刺繍し、
書棚を埋める豆本の制作にはコナン・ドイルが立ち会うことになったのだとか。

この「ミニチュアの架空のお住まい」、サイズは1/12スケールだったそうです。
これは、1フィートのものを1インチで作ろうとしたときの縮尺になるのだとか。


作品名:くし形莨盆(つぶ足)
備考:表千家好

くし形莨盆(つぶ足)
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歯をそなえた櫛としては、古代エジプトですでに広く使用されていたみたいで、
日本でも縄文時代早期(約7000年前)のものとみられる木製櫛が出土しているのだとか。

櫛の語源は「霊妙なこと、不思議なこと」という意味の「奇(く)し」「霊(くし)び」なんだそうで、
櫛は別れを招く呪力を持っているとされたようです。


作品名:桐つぼつぼ透莨盆
価格:10,000円
寸法:高さ9.6cm/幅22.8cm

桐つぼつぼ透莨盆
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つぼつぼは「底が平たく、中ほどが膨れ、口の狭い土器」のことみたいです。
この土器、直径3〜4cmほどの壷形をした素焼。つぼつぼと重ねて云うのは、
幼な言葉が、一般にそう呼ばれるようになったとのこと。
『都名所図会』や『諸国年中行事』によると、江戸時代の伏見稲荷で売られていたとか。


作品名:糸巻莨盆
作者:岡本陽斎
備考:木箱入/中古品

糸巻莨盆
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糸巻は、糸枠(いとわく)の形をとった茶道具の総称だそうで、
糸巻棚・糸巻煙草盆・糸巻蓋置などがあるみたいです。

さて、手無莨盆としては、表千家六世覚々斎好に、
一閑潤朱塗で上下に糸巻透しで、
左右の繰りがない糸巻莨盆があるそうです。

他にも、表千家七世如心斎好で、檜黒塗糸巻透・青漆爪紅糸巻透、
表千家十二世惺斎好で、秋田春慶糸巻透
などもあるみたいです。

逆に、手付莨盆だと、表千家十三世即中斎好に、
真塗の糸巻透手付莨盆、
表千家十四世而妙斎好に、一閑の糸巻透手付莨盆が、
それぞれあるみたいです。


作品名:桑手付莨盆
作者:木兵衛
寸法:高さ9.5cm/幅20.0cm
備考:木箱入
/鵬雲斎好桐透

桑手付莨盆
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ここでは、好みものの桑木地の手付莨盆についてまとめてみようかと思います。

表千家七世如心斎好 : 鯨手の桑木地
裏千家四世仙叟好 : 二重底桑莨盆
裏千家七世最々斎竺叟好 : 桑木地
裏千家十世認得斎柏叟好 : 鯨手桑
裏千家十一世玄々斎精中好 : 桑七宝透鯨手莨盆
裏千家十五世鵬雲斎汎叟好 : 桐透桑手付
武者小路千家十二世愈好斎好 : 桑曲手付

『茶道筌蹄』に、
「くじら手 如心斎好、桑木地」
「つぶ足 如心斎このみ、桑木地」
「半庵好 葉入角、桑手も共木にて唐草すかし」
「行李蓋 原叟このみ、真ぬりの通りにて桑きじ」
「覚々斎好 中段にとまりあり、げす板に火入灰吹切こみ、下へ煙草入をいれる、桑きじ」
「絲巻 如心斎このみ、しんぬりの通りにて桑」、
とあるそうです。



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