「掛物の墨跡」について

Category: 掛軸, 茶道史

立花実山著『南方録』に以下の利休の話があるそうです。

一座建立の道を得るためには、何といっても掛物が第一です。
その中でも墨跡が第一でしょう。そこに書かれた言葉の心を敬い、
著者である道人(どうじん)や仏教の祖師方の徳を賞するからです。

俗人の筆になるものは掛けてはなりません。
しかし、歌人の詠んだ教訓的な歌などは掛けることもあります。
ただし、これはわび小座敷の場合であって、
四畳半にもなると本当の草庵とは心持ちが違ったものになります。
よくよく分別する必要があります。

釈迦や達磨などの祖師の語と、
筆者の徳とが兼ね備わった墨跡をまず第一とし、
これが最も大切な一幅といえます。

著者が徳の大きい人物とまで言えなくても、
釈迦や祖師の言葉を書いている墨跡を第二とします。

絵も筆者次第では掛ける場合もあります。
中国の僧の絵には、仏祖の像や人物を描いた絵が多くあります。

人によっては持仏堂のようだと言って掛けない人もいますが、
それは一方的な見方です。

むしろ、いっそう味わって掛けるべきでしょう。
仏や祖師の教えに帰依して心を寄せることが、
わび茶では特別に大切な心得です。


掛軸

茶道具「掛軸」に関するページは、こちらから。

Leave a Reply