「[懐石器物]香物鉢」について

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香物鉢(こうのものばち)は、
茶事にだされる懐石において、
湯桶と一緒に最後に持ち出される、
漬物を入れた鉢をいうそうです。

必ず沢庵を用いて、他に季節の漬物を一種か二種、
取り合わせるようです。

ただ、暁(あかつき)の茶事や朝茶事では、
「何もございませんが、せめて香の物でも」
との心入れで、五種盛りにするみたいです。

沢庵をまず盛って、あとは、刻んだもの・
ざんぐり切ったもの・薄く切ったもの・
細長く切り揃えたものと、
形を変えて取り合わせ、
味においても、塩漬・ぬか漬・辛子漬・
醤油漬・粕漬・酢漬等、変化を持たせるそうです。

■容器について
香物鉢は、小鉢を用いることが多く、
しかも侘びた風情のものが好まれるのだとか。

また、香の物が取り易い様に、
口縁が反った端反形が多いそうです。

香物鉢の代表的なものとして、
古染付雁木鉢・御本刷毛目鉢・伊賀沓鉢・
唐津沓鉢・黒織部沓鉢・唐津片口・
黄瀬戸銅鑼鉢・三島や南蛮編笠鉢などがあるようです。

■古くは引重(ひきじゅう)
むかしは「引重」と呼ばれる二段重ねの塗箱を用い、
上の重に香の物を、
下の重に焼物を盛り付けたみたいです。

かつては「香の物」が主菜にも数えられ、
向付・煮物・香の物で一汁三菜ともされたものを、
余りに淋しいということで、引重を用いて、
主菜の香の物を上の重に入れ、
それに添えて下の重に焼物を入れて出すようになったようです。

その後、焼物が主菜になって、
引重に替り皿鉢を用いるようになり、
香の物も付け合せていたものが、
香の物を湯桶を出すときに、別に鉢で持ち出すようになっていくとか。

現在でも、朝茶や極侘びの茶事では焼物が省かれ、
煮物までを主菜として、
初献のすぐ後に香の物を出して客に預けることもあるそうです。


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「[懐石器物]強肴(預鉢/進肴/追肴)」について

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強肴(しいざかな)は、初風炉や開炉、席披き(せきびらき)など、
祝い事の折りに良く出されるみたいです。

強肴については、流儀によって、
焼物のあとに出す肴を「預鉢」、
八寸のあとに出す肴を「強肴」とすることもあるようです。

焼物のあとに出される預鉢には、
飯の菜(おかず)になるような炊き合わせとして
「煮物」などを盛ることが多いそうです。

八寸のあとに出される強肴には、
酒の肴になるものを出すことが多いのだとか。

また、炊き合わせを「預鉢」、
和え物や珍味などを「強肴」と称することもあるみたいです。

八寸のあとに出される「強肴」には、
和え物や酢の物などを入れる小鉢や、
酒の肴として海鼠腸・雲丹・酒盗・塩辛の類を入れる、
小振りの珍器が選ばれるそうです。

古赤絵・青磁手桶・青磁馬上杯・唐津石ハゼ・
黄瀬戸半筒などが珍肴入として用いられたりするようです。


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「[懐石器物]預鉢(強肴/進肴/追肴)」について

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預鉢(あずけばち)は、
茶事にだされる懐石において、
一汁三菜の後に、鉢に盛り合わせて出す料理で、
亭主は鉢を客に預けて水屋に下がり、
客はこの鉢を取り回すようです。

焼物鉢よりやや小さめの方が好ましいそうです。

懐石は、一汁三菜が基本なのですが、
もう一品との心入れから、
亭主は徳利と石盃を持ち出して、
客に酒を注いで回るみたいです。

そして、二度目の飯器を持ち出した後、
鉢と徳利を正客に預けるとか。

その間に亭主は水屋に下がって十分程で
食事を取るそうです。
(これを亭主相伴というみたいです。)

この預鉢は、炊き合わせや酢の物などを、
鉢に持って出すようです。

今日では、料理全体が贅沢になっているみたいですが、
本来懐石では、向付や煮物椀などに使った魚の、
残った部分を利用して旬の野菜と一緒に炊き合わせたり、
和え物にしたりして出すのだとか。

素材そのものを無駄にせず、
粗末に扱わずに大切にするということが、
原点でもあるそうです。

■「さかな」とは
古くは、「取肴(八寸)」とは別に、
ただ「肴(さかな)」とのみ記されることが多く、
「肴」はもともと副食を「な」といい、
「菜」「魚」「肴」の字をあてていたもので、
「さかな」は酒のための「な(おかず)」という意味なのだとか。


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「[懐石器物]焼物鉢」について

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焼物鉢(やきものばち)は、
一汁三菜の三菜目にあたる、
焼物を入れる鉢だそうです。

一般的には客の数だけ焼物鉢に盛り込んで出し、
客は向付に焼物を取り、
鉢を次客に手送りするようです。

焼物鉢は、備前・信楽・織部などの、
手ごろな平鉢が多く用いられ、
「手鉢」という手の付いた鉢類も、
好んで用いられるみたいです。

■焼物鉢以前は引重(ひきじゅう)
焼物の器に陶磁器を使うようになったのは、
明治期以降ともいわれるとか。

むかしは焼物とはいわず、
引物・引菜(ひきな)と呼ばれたそうで、
引重と呼ばれる二段重ねの塗箱を用い、
上の重に香の物を、
下の重に焼物を盛り付けたようです。

古くは「香物(こうのもの)」が主菜に数えられ、
向付・煮物・香物で一汁三菜とされたものを、
余りに淋しいということで、
引重を用いて、主菜の香物を上の重に入れ、
それに添えて下の重に焼物を入れて、
出すようになったみたいです。

引重は、現在では、
あらたまった茶事のときに使われているとか。

■魚以外の焼物
焼物は主に魚の切り身を焼いたものが多いようですが、
別に魚以外のものを使って焼いてもかまわないそうです。

また、揚げ物や蒸し物でも良いとか。

例えば、貝類では、アワビやホタテ貝など、
その身自体が大きくて食べがいのあるもの、
野菜では、暑気ばらいに加賀茄子の田楽や、
長いもの付け焼など、
炉の季節だと、堀川ゴボウや筍の輪切りを、
焼いたものなども良いそうです。

精進もので、湯葉の付け焼や生麩は、
季節に関係なく使えるようです。

鳥獣類だとローストビーフや牛肉の鍬焼き(くわやき)、
合鴨をフライパンで焼いたものなど、
炉の季節には、うずらの山椒焼なども良いみたいです。


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「[懐石器物]向付(向/お向)」について

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向付(むこうづけ)は、
折敷の手前に飯碗や汁碗が置かれ、
その向う正面に置き付けるところからの名みたいです。

主に魚介類の造り身が盛られるとか。

酢の物や和え物にしても良いようです。

朝茶事では、生身は使わない方が良いそうで、
風干しや、ひと塩ものを火取り、野菜と和えたり、
極寒の夜咄では、あつあつの湯葉や風呂ふきを
出したりもするとか。

「何もございませんが粗飯を」との挨拶の後、
最初に膳に載せて持ち出されるのが、
向付みたいです。

向付は、懐石が終わるまで、
焼物や預鉢の料理を取り分ける器になるそうです。

向付は、春季には明るい色調のもの、
夏季には染付の平皿風のものや、
涼味を感じさせる義山(きやまん)が用いられるようです。

秋季には「割山椒」など地味な侘びたもの、
冬季には筒型の少し深い「筒向(つつむこう)」や、
蒸物などの温かいものを盛る蓋付の「蓋向(ふたむこう)」が、
多く用いられるとか。

ただ冬季でも夜咄では「筒向」では中が見えにくいので、
避けるそうです。

向付は、深い鉢形を「深向(ふかむこう)」、
浅い皿形のものを「平向(ひらむこう)」といい、
深い器形の向付を「のぞき」ともいうようです。

「寄向(よせむこう)」といって、
名残などのときに、一同に揃いの物を出さず、
ひとりひとり別々のものを使うこともあるみたいです。

まとめると、以下の様な感じです。

種類 備考
割山椒 山椒の実が3つに裂けた形。
筒向 円筒形で底が深くなったもの。
上から覗き込まないと中の料理が見えないことから、
古くは「のぞき」の別名もあった。
蓋向 蓋付きの向付。
深向 深い鉢形の向付。
平向 浅い皿形の向付。
のぞき 深い器形の向付。
寄向 それぞれの客に異なる器を出す。


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