「[懐石家具]懐石家具」について

Category: 懐石道具

さて、一連の懐石道具の説明もこれで最後になります。

懐石家具(かいせきかぐ)は、
懐石に用いられる膳や椀の類を言うそうです。

かつては膳や椀の類を「家具」と言い、
塗師の中で椀具・折敷・膳・重箱等を造るものを
「家具屋」と言ったところから、
懐石に用いられる塗物の道具を言うのだとか。

膳(折敷)・飯椀・汁椀・煮物椀・箸洗(吸物椀)・
通盆・飯器と杓子・湯桶と湯の子すくい・脇引
で一式揃いとなるようで、皆具と総称するそうです。

同色の一揃いが原則みたいで、
無地の朱塗は、極秘の伝授の時や、
真の精進の時に使うようです。

一般には、黒塗の行の家具で揃えるのが良いそうです。
他に、蒔絵・溜塗・青漆・春慶・一閑・糸目などがあるようです。

両椀(飯椀と汁椀)だけは、
常に対にして使用するのが約束みたいです。

これに、向付、鉢類(焼物鉢・香物鉢)、八寸、酒器が加わって、
一汁三菜の懐石の器が揃うそうです。

■懐石と一汁三菜とは
利休時代の茶会記では、懐石は、
茶会の食事について「会席」「ふるまい」と記されているそうで、
本来は会席料理と同じ起源であったみたいです。

江戸時代になって茶道が理論化されるに伴い、
禅宗の温石(おんじゃく)に通じる、
「懐石」の文字が当てられるようになったとか。

懐石とは寒期に蛇紋岩・軽石などを火で加熱したもの、
温めた蒟蒻(こんにゃく)などを布に包み、
懐に入れる暖房具を意味するみたいです。
一汁三菜は、元々は鎌倉時代に禅寺で採られていた、
質素倹約を重視した食事の形式を指す言葉だったようです。

この食事形式が一般の人々にも広まり、
やがて一汁一菜・一汁三菜が、
日本の伝統的な日常の食事形態として定着するに至ったみたいです。

天正年間には堺の町衆を中心としてわび茶が形成され、
その食事の形式として一汁三菜(或いは一汁二菜)が定着したようです。

これは『南方録』でも強調され、
「懐石」=「一汁三菜」となったのだとか。

江戸時代に、三菜を「刺身(向付)・煮物椀・焼き物」とする形式が確立し、
その後、料理技術の発達と共に、
「もてなし」が「手間をかける」ことに繋がり、
現在の茶道や料亭文化に見られる様式を重視した、
「懐石」料理が完成したみたいです。

なお『南方録』以前に「懐石」という言葉は確認されていないようで、
同書を初出とする考えがあるみたいです。

懐石料理は茶事以外の場、
例えば料亭や割烹などの日本食を扱う料理店を初めとして、
様々な飲食店で提供される饗応料理である、
「会席料理」と同じ「カイセキ」の発音の混同を防ぐため、
茶事を目的とする本来の懐石を、
特に「茶懐石」と表して区別することもあるとか。


懐石道具

「懐石道具」に関するページは、こちらから。

「[懐石家具]脇引(湯盆/長盆)」について

Category: 懐石道具

脇引(わきびき)は、縁のついた長方形の盆で、
亭主が煮物椀や吸物椀などを、
一度に数個を載せて出し下げするのに用いるそうです。

多くは黒塗りで、大小二枚入れ子になっているとか。

本来は湯次を湯の子すくいや、
香の物鉢などと一緒に持ち出したもので
「湯盆(ゆぼん)」とも言うようです。

好みは以下みたいです。
利休形:黒角きらず
仙叟好:溜/長角かんなめ/がばとち/畳付黒
原叟好:一閑/長角ためぬり/畳付黒
元伯好:黒丸


懐石道具

「懐石道具」に関するページは、こちらから。

「[懐石家具]通盆(給仕盆)」について

Category: 懐石道具

通盆(かよいぼん)は、縁のついた丸盆で、
亭主が飲食物の給仕に用いるようです。

多くは黒塗りで、
大小二枚の入れ子になっているとか。

利休形は、丸/黒/杉の木地/鏡へぎ目で、
元伯好は、一かん張だそうです。

通盆は、小吸物椀を、
正客にだけ運ぶためのお盆のようで、
連客には、長盆を使うみたいです。


懐石道具

「懐石道具」に関するページは、こちらから。

「[懐石家具]湯桶(湯次/湯斗)」について

Category: 懐石道具

湯桶(ゆとう)は、共の盛蓋付の円筒形で、
胴に注口と把手が付いた、
食後に出される「湯の子」を入れる器のことだそうです。

湯桶には、湯桶と同じ素材でできた
「湯の子すくい」という細長い柄が、
直角に付いた杓子が添っているようで、
これで湯の子をすくうみたいです。

利休形は、黒塗りで、
風炉には、金属製の湯次・湯の子すくいを、
用いることもあるとか。

■湯の子について
湯の子は、二飯器めを出した後、
釜の飯をあけ、釜底に残ってくっついている飯を
弱火で焦がしておこげをはがすそうです。

このおこげを湯桶に移し、
ほんの少し塩加減をした湯を注ぎ入れるようですが、
塩加減は、その時使う香の物と、
沢庵の味とのバランスを考えて調味するみたいです。

■持ち出し方
長盆(脇引)に向かって左側、
口が右を向くように湯桶を、
右側に香の物鉢を載せ、
湯の子すくいを二つの前に置いて、
持つ出すそうです。


懐石道具

「懐石道具」に関するページは、こちらから。

「[懐石家具]飯器(飯次/食次)」について

Category: 懐石道具

飯器(はんき)は、共の盛蓋付の低い寸胴形の飯櫃(めしびつ)で、
杓子が添っているそうです。

飯櫃は、炊き上がった飯を移し入れておく器で、
「おひつ」「おはち」などとも言うようです。

多くは木製で、白木(サワラ材)や漆器のものがあるとか。

蓋の形状によって「つめびつ」「のせびつ(関西櫃・地櫃)」
「かぶせびつ(江戸櫃)」があるようです。

朝茶などには、竹組の飯器/金物の杓子を、
用いることもあるとか。

利休形は、黒塗りで、炉用は手なし、
風炉用は手付きみたいです。

新しいものは、木肌がなれないから、
木の香が飯に移ることがあるみたいです。

木の香を抜くには、熱湯で満たし、
これに少量の酢を加えるということを、
数回繰り返せばよいそうです。

■歪の語源
飯櫃(めしびつ)は、飯櫃(いいびつ)とも読めるのですが、
「いいびつ」から転じて
「歪(いびつ)」という語が生まれたみたいです。

昔の飯櫃は、楕円形だったそうで、
楕円形は綺麗な円形でないことから、
江戸時代以降、形や状態が歪んでいる意味として、
用いられるようになったとか。


懐石道具

「懐石道具」に関するページは、こちらから。