銘入塗茶杓 堀内宗完(表千家) 花景(ハナゲシキ)
花といえば、昔は梅(古今集)でしたが、
いつのころからか桜(新古今集)へと変わったようです。
・人はいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける(古今集)
・風かよふ寝ざめの袖の花の香にかをるまくらの春の夜の夢(新古今集)
桜といえば、宮城道雄の曲「さくら変奏曲」とか、
童謡の「さくら」などがありますが、
現代でもアーティストがいろいろ「桜」の付く曲を
数多く手がけていますね。
それだけ日本人の心に感動を与えているのではないでしょうか。
桜景色といえば、花見の季節を思いだします。
「ワシントンの桜」は、明治の終わりごろに、
アメリカのタフト大統領夫人の希望により、
当時の尾崎行雄東京市長がプレゼントしたものだそうです。
この桜並木なども浮かんできます。
銘入茶杓 久保良斎 銘:瑞雲
雲にもいろいろありますが、
流れ行く雲に数々の思いをはせ、
静寂の中、心豊かなひとときを、
この茶杓で演出できれば、良いのではないでしょうか。
銘入茶杓 影林宗篤 銘:清流
ブルグミュラー7番の「清い流れ」というピアノ曲もありますが、
美しい水の流れを想像できます。
日本の川と言えば、私は利根川や四万十川を思います。
屋形船での舟遊びや、渓流下りとかいろいろ思いますが、
どこまでも続く長い長い川もよろしいのではないでしょうか。
銘入茶杓 桂堂(瑞峰院前住職) 銘:豊兆
茶杓の色が、落ち着いていて、使い込むめば使い込むほど良くなると思われます。
全体の茶杓の形は美しく、特に櫂先が目を惹きます。
豊兆は「雪豊年兆」(雪が多く降るのは豊年の前兆であること。)から来ているようです。
「新しき年の初めに豊の年しるすとならし雪の降れるは」(万葉集)があります。
雪見の茶事で、松風の音が静かに聞こえる中、
茶室からふと外を見ると、雪がしんしんと降っている。
戦後の経済成長と共に、人々は豊さを手に入れていきました。
ただ、心の豊かさは、徐々に失われていったのではないでしょうか。
「報恩」という言葉があります。
親・兄弟に対し、恩に報いるという意味ですが、
いつの間にか、使われなくなって久しいと思います。
茶室から見る雪は、心の豊かさを彷彿とさせる兆しへと、
「豊兆」の茶杓を使った点前で、温かな抹茶を飲みながら
古き良き時代を懐かしむ時間となれば、良いですね。