重香合(じゅうこうごう)は、銀葉などを入れる三重の箱で、
茶道では、塗物の丸形三つ重ねとなったものみたいです。
上段に香を包んだ香包、
中段に銀葉をそれぞれ入れ、
下段は香の焚きがらを入れるようです。
香盆に置く場合、
香盆の右に重香合、左に聞香炉、
香盆の中央に銀葉挟を横一文字にして置き、
香箸を縁にかけてのせるみたいです。
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香(こう)というと、本来は「伽羅」「沈香」「白檀」などの天然香木の香りを指すそうです。
そこから「線香」「焼香」「抹香」「塗香」などの香り、またこれらの総称として用いられるみたいです。
仏教では、香を焚くと不浄を払い心識を清浄にするそうで、
仏前で香を焚き、花や灯明とともに仏前に供するようです。
ここから「香華を手向ける」という言葉があるとか。
茶道では、炭点前などで使用するほか、七事式の且座之式のように、
「香りを聞く」こともあるようです。
風炉の場合は香木、炉の場合は練香を使用するみたいです。
ここでは「香の歴史」「香道」「香道で使う道具」「且座之式」の順に
説明していこうと思います。
■香の歴史
香の歴史はかなり古く、紀元前3000年前のメソポタミア文明のころまで遡るそうです。
種類も多く、白檀、丁香などの「樹木の皮・葉・根などの粉末」や、
乳香、安息香などの「芳香のある樹脂」、
麝香、竜涎香などの「動物性のもの」があるそうで、
ふつう「香木(明香)」と「練香(煉香・合香)」とに分けられるみたいです。
また、使用方法の違いで、焚いて使用する香「焼香」と、
焚かずに体に塗る香「塗香」に分けられるようです。
日本書紀によると、香木は595年に淡路島に漂着したそうです。
その後、宗教、主として仏教の儀礼で香木が焚かれるようです。
平安時代になると、宗教儀礼を離れて、香りを聞いて鑑賞するようになり、
薫物合せ(たきものあわせ)などの宮廷遊戯が行われたのだとか。
室町時代の東山文化の頃、茶道や華道が大成するのとほぼ同時期に、
香道の作法も整い、現在の形に近いものになったそうです。
また、香を茶道にも取り入れ、書院の床の正面に香炉を飾って、
香をたくようになったみたいです。
当時、香合は香炉の脇役だったとのこと。
この頃の香合の素材は、金器・銀器・漆器・木彫・古代蒔絵などが好まれたそうです。
桃山時代になり、陶磁器製の香合が使用され始めるそうです。
利休が楽焼の香合を作らせたのが焼物香合のはじまりなんだとか。
やがて、織部焼・野焼・瀬戸焼・備前焼・唐津焼などの国焼物の香合がでてくるみたいです。
江戸時代初期になると、外国製品尊重の思想から、
中国の古染付・祥瑞・青磁・交趾焼等の形物香合が主流となるようです。
香合については、別ページで説明しています。
香木の分類法である「六国五味(りっこくごみ)」などは、
室町時代頃に体系化されたようです。
六国五味というのは、香木の香質を味覚にたとえて、
辛・甘・酸・鹹(しおからい)・苦の五種類に分類する「五味」と、
その含有樹脂の質と量の違いを六種類に分類する「六国」のことを指すそうです。
六国五味の詳細は以下のようになるみたいです。
| 木所 | 読み方 | 原産国 | 五味 |
|---|---|---|---|
| 伽羅 | きゃら | ベトナム | 苦 |
| 羅国 | らこく | タイ | 甘 |
| 真那伽 | まなか | マラッカ | 無味 |
| 真南蛮 | まなばん | マナンバール | 鹹 |
| 佐曾羅 | さそら | サッソール | 辛 |
| 寸聞多羅 | すも(ん)たら | スマトラ | 酸 |
■香道
香りを楽しみ、日常を離れた集中と静寂の世界に遊ぶことを目的としたもので、
香木の香りを聞き、鑑賞する「聞香(もんこう)」と、
香りを聞き分ける「組香(くみこう)」の二つが主な要素だそうです。
香木の焚き方は、以下の手順だそうです。
1.聞香炉に灰と、おこした炭団(たどん)を入れ、灰を形作る。
2.灰形の上に、銀葉という雲母の板をのせる。
3.数ミリ角に薄く切った香木を熱し、香りを発散させる。
4.銀葉を灰の上で押すことにより、銀葉と炭団の位置を調節する。
これにより伝わる熱を調節し、香りの発散の度合いを決める。
香道には、古くから香に関する訓や効用を記した「香十徳」というのがあるそうです。
| 徳の名称 | 読み | 意味 | 感格鬼神 | 感は鬼神に格(いた)る | 感覚が鬼や神のように研ぎ澄まされる |
|---|---|---|
| 清淨心身 | 心身を清浄にす | 心身を清く浄化する |
| 能除汚穢 | よく汚穢(おわい)を除く | 穢(けが)れをとりのぞく |
| 能覺睡眠 | よく睡眠を覚ます | 眠気を覚ます |
| 静中成友 | 静中に友と成る | 孤独感を拭う |
| 塵裏偸閑 | 塵裏に閑(ひま)をぬすむ | 忙しいときも和ませる |
| 多而不厭 | 多くして厭(いと)わず | 多くあっても邪魔にならない |
| 寡而為足 | 少なくて足れりと為す | 少なくても十分香りを放つ |
| 久蔵不朽 | 久しく蔵(たくわ)えて朽ちず | 長い間保存しても朽ちない |
| 常用無障 | 常に用いて障(さわり)無し | 常用しても無害 |
■香道で使う道具
香道で使う道具は、以下のものだそうです。
ちなみに茶道では「香合」を使用するなど、道具組みが少し違うようです。
香炉:聞香炉、火取り香炉
七つ道具:銀葉挟、きょうじ、香匙、鶯、羽箒、こじ、灰押
盆・箱など:四方盆、乱箱、志野袋、長盆、重香合、総包
そのほか:地敷、香盤、銀葉、名乗紙、香包
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■且座之式
七事式の且座之式(しゃざのしき)について簡単に説明してみます。
これは、本来五人で行う儀式で、
「東(とう)」「半東(はんとう)」「炭」「花」「香」の役割があり、
その役は、その時引いたくじで決めるのだそうです。
亭主を「東(とう)」、亭主の補助役を「半東(はんとう)」、客は三人。
それぞれ、
次客→花をいける
三客→炭をつぐ(初炭点前)
正客→香をたく
東→濃茶を点てる
半東→東のために薄茶を点てる
となるみたいです。
花をいける→炭をつぐ→香をたく→濃茶→薄茶
という感じでなるでしょうか。
結局、一人だけお茶を飲めない人が出るのですが、誰でしょう?
