「[懐石道具他]箸」について

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食事にかかせない箸について、
何回かに分けて、説明しようかと思います。

■箸の歴史
殷墟(紀元前14世紀~紀元前11世紀)からの、
青銅製の箸6本が出土しているそうです。

食事用ではなく菜箸のような調理器具であったようです。

食事用の使用例としては、殷の帝辛(紀元前10世紀)が、
象牙の箸を使用したという逸話が『史記』及び、
『韓非子』にあるみたいです。

中国の戦国時代の記述に現れる「箸」は、
竹製みたいで、竹の棒の中央部分を加熱して曲げて作った、
トングに由来する「竹筴」と呼ばれるピンセット状のものが、
湖北省随県曾侯乙墓から出土しているそうです。

その後、孔子の「君子厨房に近寄らず」の格言に基づき、
刃物等を食卓上で使うことに反対したため、
料理はあらかじめ厨房でひと口大に、
箸にとりやすい大きさに切りそろえられるようになり、
箸が普及していったみたいです。

■日本の箸
日本では、弥生時代末期の遺跡から一本の竹を折り曲げ、
ピンセット状の形にした「折箸」が発見されているそうです。

これは、神に配膳するための祭祀・儀式用の、
祭器として使われたものみたいで、
食べ物を口に運ぶためではなかったようです。

『三国志』魏志倭人伝によると、
邪馬台国においては、手で飲食しているとあり、
箸の使用は記述されていないみたいです。

食事用の箸として正式に使用した例は、
聖徳太子だそうです。
607年遣隋使として派遣された小野妹子一行が、
持ち帰った箸と匙をセットにした、
食事作法を取り入れたものと言われるとか。

■嫌い箸(忌み箸/禁じ箸)
箸食文化圏においてマナー違反とされている、
箸の使い方があるそうです。

嫌い箸について以下にまとめてみます。

種類 備考
握り箸 二本の箸を鷲づかみにして食事に使う所作。
拝み箸 両手で箸をはさみ、拝むようにする所作。
横箸 箸を二本揃えて、スプーンのように食べ物を掬い上げる所作。
または、箸を舐める所作。
違い箸 種類・材質の異なる箸を一対で用いる所作。
返し箸・逆さ箸 複数人で食べる料理を個に取り分ける際、
箸を上下逆さにして用いる所作。
ちぎり箸 箸を両手に1本ずつ持って、
ナイフとフォークのように料理をちぎる所作
突き箸・刺し箸 料理に箸を突き刺して食べる所作。
仏箸・立て箸 箸をご飯に突き刺して立てる所作。
合わせ箸・拾い箸・
箸渡し
箸から箸へ料理を渡す所作。
叩き箸 箸で食器を叩いて音を立てる所作。
振り上げ箸 箸を手の甲より高く振り上げる所作。
指し箸 箸で人や物を指し示す所作。
持ち箸 箸を持った手で同時に他の食器を持つ所作。
受け箸 箸を持ったままでおかわりをする所作。
寄せ箸 遠くの食器を手元に引き寄せるために、
箸を使う所作。
空箸 食べようとして料理に箸を伸ばしたにもかかわらず、
口に運ぶことをやめて箸を引いてしまう所作。
迷い箸・惑い箸・
なまじ箸
どの料理を口にしようかと迷い、
料理の上であれこれと箸を動かす所作。
移り箸・渡り箸 おかずを食べた箸でまたおかずを食べること。
現在では嫌い箸とみなされない。
挵り箸・せせり箸 箸で食物を尖った物で繰り返しつつく所作。
楊枝箸 箸を爪楊枝代わりに使う所作。
涙箸 汁が滴りやすい料理を食べる際、
それを取った箸から汁を滴らせながら口に運ぶ所作。
探り箸 箸を椀の中でかき回して探る所作。
洗い箸 汁物などで箸を洗う所作。
捥ぎ箸(もぎばし) 箸に付いた米粒などを口で捥(も)ぎ取る所作。
舐り箸(ねぶりばし) 箸を舌で舐める所作。
咥え箸 箸を口に軽く挟んで支える所作。
噛み箸 箸を噛む所作。
掻き箸 食器に口を付け箸で食べ物を掻き込む所作。
橋箸・渡し箸 箸休めのときに箸を器の上で横にかける所作。
揃え箸 箸を食器等に突き立てて揃える所作。
直箸 取り箸を使わずに個人の箸で、
直(じか)に取り分ける所作。
透かし箸 骨付き魚の上側を食べた後、
骨越しに裏側の身をつついて食べる所作。
撥ね箸(はねばし) 嫌いなものを箸でのける所作。
重ね箸・片付け食い・
ばっかり食べ
他にもあるなかで一つの料理ばかりを食べ続ける所作。
込み箸 箸を使って口の中に大量に食べ物を詰め込みほおばる所作。
落とし箸 食事中に箸を床に落とす所作。


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「[懐石道具他]包丁(庖丁)」について

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懐石料理を作るのに欠かせないものの1つが、
包丁でしょうか。

包丁は、かつて「庖」が当用漢字外とされたため、
同音の「包」で代用することが多いのですが、
本来は「庖丁」みたいです。

■庖丁の語源
「庖」は調理場を意味するようです。

また「丁」はそこで働く男、
つまり「庖丁」の原義は
「料理人」のことになるそうです。

『荘子』の「養生主篇」に、
魏の恵王の御前で、ある庖丁が見事な刀捌きで、
牛一頭を素早く解体して見せ、王を感銘させる記事があるとか。

彼の使用した料理刀を後に庖丁と称し、
これが日本語読みで「ほうちょう」となったみたいです。

■包丁の種類
包丁には、以下の様な種類があるようです。

種類 備考
和包丁 出刃包丁 魚や鳥等を解体するときに使う。
厚く重い包丁で、形状は三角形。
薄刃包丁 野菜全般を切るための包丁。
菜切り包丁 両刃で切っ先が丸い。
刺身包丁 刺身を引くための包丁。
刃渡りが長い。
三徳包丁 [万能包丁]家庭で一般的に使われている包丁。
身卸包丁 捌きから刺身を引くまで出来る。
出刃包丁の刃をやや細く長くしてある。
舟行包丁 [万能包丁]多くの料理道具を携帯できない、
釣り船などに持ち込む。
鮪包丁 [特殊包丁]マグロの解体用。
鰻裂き うなぎを捌く包丁。
穴子包丁 アナゴを捌く包丁。
鱧切り [特殊包丁]ハモの骨切り用。
附庖丁 [特殊包丁]かまぼこの成型用
フグ引き [特殊包丁]フグの刺身用。
鰹包丁 [特殊包丁]カツオ用。
麺切包丁 麺を切るための包丁。
寿司切り [特殊包丁]巻き寿司用。
餅切り [特殊包丁]餅用。
豆腐切り [特殊包丁]豆腐用。
寒天切り [特殊包丁]寒天用。
西瓜切り [特殊包丁]スイカ用。
菓子切り [特殊包丁]羊羹用。
洋包丁 牛刀 刃渡りが長く大きい肉切り包丁。
筋引 ヒレ肉のスジを切り離す、長く細身の包丁。
カービングナイフ 肉の塊を切り分けるのに使う。
スライサー 薄切り肉や刺身、ハムなどのスライス用。
刃先には丸みがある。
クレーバー 肢の関節を叩き切るなど鉈(なた)のように使う。
刃が厚く重く、形状は四角形。
骨スキ 骨から肉を切り剥がすため用。
ガラスキ 鶏など丸鳥の解体用。
刃が厚く長い。
フィレナイフ [万能包丁]刃がやや細く長い。
刃は弾力性が高く、ほんの少し背のほうへ反っている。
洋出刃 牛骨を刃の背で砕いたりする。刃が厚く頑丈。
ペティナイフ [万能ナイフ]野菜・果物の皮むき、飾り切りなど。
パン切り包丁 切断面近くの組織をつぶさないように、
刃厚が薄く幅が狭い。
その他 中華包丁 [万能包丁]身幅が大きく、刃は四角い。
中華包丁上海型 魚おろし用の切っ先を持つ三角形。
冷凍切り包丁 冷凍した食材をスライスする。
刃先がギザギザの波刃。
ケーキナイフ ケーキ用。
チーズナイフ チーズ用。
シェルナイフ 貝をむく貝むき用。


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「[酒器]石盃(席盃/寄盃/ぐい呑)・猪口」について

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石盃(せきはい/いしさかずき)は、
茶事にだされる懐石に用いる、
陶磁器の盃のことだそうです。

引盃にたいする呼称なのだとか。

それぞれ異なったものを客の数だけ取合せ、
通盆に載せて徳利ととも席中に持ち出すようです。

一般的にお猪口と呼ばれるものより、
大きいサイズのものを指すようです。

■猪口(ちょこ/ちょく)
現在では徳利から酒を受け、
飲むのに用いる小さな器みたいですが、
徳利とセットで使うようになったのは、
江戸時代以後みたいです。

江戸時代では上方でも江戸でも、
宴の初めのうちは盃で酒を受け、
宴も半ばを過ぎ座がくだけてくると、
猪口に変えたそうです。

利き酒で使われる猪口は、
「利き猪口」と呼ばれるとか。


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「[酒器]徳利」について

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徳利(とっくり/とくり)は、茶事にだされる懐石に用いる、
酒を入れて杯に注ぐための容器だそうです。

多くは口径が狭く、胴の膨らんだ背の高い形状の酒次みたいで、
強肴とともに石盃を添えて席中に持ち出すようです。

茶事において、焼物を出したあと、
亭主が水屋で相伴するため、
その間客同士が勧めあって、ゆっくり飲んでもらおうと、
詰の客に預けておく二合以上入るような大振りの徳利を
「預徳利(あずけどっくり)」というそうです。

注いだとき「トクトク」と音がするものが好まれ、
この意味では口が広すぎてはならないが、
一方で狭すぎては内容物がスムーズに出てこないため、
両者の兼ね合いから、小指が入る程度のものが適しているようです。

数え方は「一本」、または肩に下げて持ち歩いたことから
「一提(ひとさげ・いっちょう)」とも数えるみたいです。

■徳利の歴史と材質
酒器としては、鎌倉時代頃までは、
瓶子が使われていたそうですが、
注ぎ口が小さく酒を注ぐに不便な事から、
次第に徳利に代わっていったとか。

徳利は、室町時代中期からこの名がみられ、
かつては錫だったものが、のち陶磁となったようです。

陶製または金属製・ガラス製で、
内容量によって180mL~1800mL程度まであるとか。

なかでも、燗酒に用いる180mL~360mL程度のものが、
よく売られているみたいです。

徳利は、瓢箪形や辣韮形など、
祥瑞・呉須赤絵・粉引・三島・朝鮮唐津・九谷などが、
好まれるみたいです。

なお、利休形徳利は、錫のようです。

酒に限らず醤油・油など、液状のものを貯蔵するためには、
「醤油徳利」や「油徳利(あぶらとっくり)」があるそうです。

蕎麦店などでは、そばつゆを入れる徳利は、
「蕎麦徳利」というとか。


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「[酒器]盃台(渡盞/後盤)」について

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盃台(さかずきだい)は、茶事にだされる懐石に用いる、
引盃を載せる台のことみたいです。

連客の数だけの引盃を積み重ねて載せ、
銚子と共に席中に持ち出すようです。

盃一枚用の場合もあるとか。
これは、亭主が持ち出す別盃や、
珍盃を載せて出すものみたいですが、
あまり使われることはなそうです。

大小複数の盃を一組にした盃を、
組盃(重ね盃)というようです。

一般的なものは三枚一組の三ツ組盃で、
盃台が付けられている場合が多いとか。

■盃台の形状
盃台は、形状は円形で高台が付き、
天目台に似ているそうですが、
高台には底があり、酸漿はごく低いことも、
全然ないこともあるとか。

高台内に底があるのは、
引盃の一番上に水を入れる向きがあり、
最後にそれを入れたり、
酒の「したみ」を入れるためだそうです。

■盃台の材質
盃と共塗か、盃が朱塗のときは、
多くは、黒塗を用いるようです。

一般的に用いられているのは、
黒塗で無地の利休形みたいです。

他に、溜塗や桑木地・黒楽・
青楽金入のものもあるそうで、
縁の形も円のほかに輪花・糸巻などもあるとか。

陶磁器の発達にともない、
やきものの盃台が現れるようになったそうです。


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