「[酒器]引盃」について

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引盃(ひきさかずき)は、
茶事にだされる懐石に用いる、
酒を飲むための塗物の盃のことだそうです。

客ひとりひとりが一枚ずつ引くので、
この名があるようです。

引盃は、古田織部が椀の蓋で酒を飲んでいるのを見て、
利休が好んだのだとか。

五客を一組とするようですが、
実際は客数だけを積み重ね盃台に載せて、
銚子と共に席中に持ち出すそうです。

■引盃の形
一般的には、朱塗で無地の利休形が用いられるとか。

昔のものは大きく、
利休形の大や、藪内好みなどでは、
一枚に五勺以上も入るようです。

初期のものは黒塗で、のちに朱塗となったみたいで、
朱刷毛目、朱掻合、蒔絵などのものもあるとか。

■千鳥の盃
酒と肴が末客まで行き渡ったところで、
亭主は正客のところへ戻り、
「お流れを」と言って自分も盃を所望するようです。

その後は亭主と客が1つの盃で酒を注ぎ合うのだとか。

亭主は正客の盃を拝借するのが通例みたいです。

正客は自分の盃を懐紙で清め、亭主はその盃を受け取り、
そこに次客が酒を注ぐそうです。

その次は、同じ盃を次客に渡し、
亭主が次客に酒を注ぐようです。

以下、末客が亭主に、亭主が末客に酒を注ぎ合った後、
亭主は正客に盃を返し、ふたたび酒を注ぐのだとか。

このように、盃が正客から亭主、
亭主から次客、次客から亭主、
と回ることから、これを「千鳥の盃」と称するそうです。


懐石道具

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「色紙画賛(東籬佳秋色) 西垣大道作」について

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色紙画賛(東籬佳秋色)



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今日は、気分を変えて、色紙画賛(東籬佳秋色)の説明をしようかと思います。

「東籬佳秋色(とうりしゅうしょくよし)」とは、
東の籬(まがき)を見ると秋色が美しい、
という意味だそうです。

これは、陶淵明著『飲酒二十首 其五』に
 盧を結びて人境にあり 而も車馬の喧(かまびす)しきなし
 君に問う何ぞ能く爾(しか)るやと 心遠ければ地も自ずから偏なり
 菊を採る東籬の下 悠然として南山を見る
 山気に日夕(にっせき)に佳し 飛鳥相い与(とも)に還る
 此の中に真意あり 辨全と欲して已に言を忘る
から取られたもののようです。

禅語としては、
「采菊東籬下 悠然見南山
 (菊を採る東籬の下 悠然として南山を見る)」
の部分が、それにあたるみたいです。

「東籬佳秋色」というのは、その後の、
「山氣日夕佳 飛鳥相與還
 (山気に日夕に佳し 飛鳥相い与に還る)」
も含めた情景と心境をとらえた語みたいです。

■東籬佳秋色
「秋の日」というのは、俳句では、
秋の太陽や日差しを指していう場合が多いそうです。

夏がすぎ、心地よくなったある秋の日の朝、
東の生垣を見ると、日の出が望めるという風景は、
一瞬、何かを悟った気になれるのかもしれません。

これを、深山幽谷・静寂の地に求めるのではなく、
現在の都会の喧騒に、この心境を持ってこそ、
この語(東籬佳秋色)の意義があるようです。

さて「山気に日夕(にっせき)に佳し 飛鳥相い与(とも)に還る」の部分は、
「山の光景は夕方が特に素晴らしい。
 鳥たちが連れ立って山の巣に帰っていく。」という意味だそうです。

清少納言著『枕草子』に
「秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、
 烏の、寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。」
とあります。

あくまで想像ですが、
『飲酒二十首』が書かれたのが5世紀、『枕草子』は10世紀なので、
清少納言が、陶淵明の有名な詩「山気に日夕(にっせき)に佳し」に
「秋」をプラスしたのかもしれません。


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「[酒器]燗鍋(酒次/銚子鍋/銚子)」について

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燗鍋(かんなべ)は、茶事にだされる懐石に用いる道具で、
酒を入れて杯につぐための、
注ぎ口と持ち手のある蓋付の器のことだそうです。

燗鍋は、古田織部が、
席上において用いるようになったのが最初みたいです。

それ以前には塗物の「酒次(さけつぎ)」を用いたようです。

現在は別の容器で燗をした酒を燗鍋に移して用いるのだとか。

燗鍋は、古くは「さしなべ」「さすなべ」ともいったそうで、
注ぎ口のある鍋に弦(つる)をつけ、
湯を沸かしたり酒を温めるのに用いたみたいです。

燗鍋の材料としては、金属製のほかに、
古染付・新渡染付・古九谷・志野・織部・古清水・御菩薩などの
塗物や陶磁器のものもあるようです。

釜師の手になるものが多く、
一般的には丸形・角形・阿古陀形なのですが、
富士形・鶴首・車軸・四方・平丸など釜の形に倣い、
そこに口と手を付けたもの、舟形・七宝形・竹節形など、
種々の器形を型どった珍しいものも作られているそうです。

釜のように霰・浪・雷紋・糸目・七宝などの、
地紋のあるものも多くあるのだとか。

燗鍋(銚子)の蓋は、共蓋で、
青磁・染付・色絵・祥瑞・織部・志野などが用いられるようです。

中には、香炉の蓋、茶器の蓋、香合の蓋などを利用し、
それらの蓋に合わせて燗鍋(銚子)を作らせたものもあるようです。

やがて、柄のついた銚子ができると、
弦をつけたものは「提子(ひさげ)」と呼ばればれすようになり、
長柄の銚子が式正の器とされるようになると、
提子は銚子に酒の減った時に注ぎ加えるのに用いるものとなったそうです。

江戸後期には徳利が流行し、
のちには徳利をも銚子と通称するようになるのだとか。


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「[酒器]酒器」について

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今日からは、酒器(しゅき)について、
説明していこうかと思います。

酒器は、茶事にだされる懐石に用いる、
酒を入れて注いだり、
酒を飲むための道具のことだそうです。

酒器には、銚子・引盃・盃台・
徳利・石盃などがあるようです。

最近では「車で来ておりますので」と、
お酒を飲めない場合もあるみたいです。

その場合、せっかく勧めていただいたお酒なので、
「不調法でございますので」と言って、
形だけ受け、目立たないように
盃台にあけると良いようです。

盃台には、したみ(したたり)受けがあるので、
そこに落とすそうです。


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「[懐石器物]香物鉢」について

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香物鉢(こうのものばち)は、
茶事にだされる懐石において、
湯桶と一緒に最後に持ち出される、
漬物を入れた鉢をいうそうです。

必ず沢庵を用いて、他に季節の漬物を一種か二種、
取り合わせるようです。

ただ、暁(あかつき)の茶事や朝茶事では、
「何もございませんが、せめて香の物でも」
との心入れで、五種盛りにするみたいです。

沢庵をまず盛って、あとは、刻んだもの・
ざんぐり切ったもの・薄く切ったもの・
細長く切り揃えたものと、
形を変えて取り合わせ、
味においても、塩漬・ぬか漬・辛子漬・
醤油漬・粕漬・酢漬等、変化を持たせるそうです。

■容器について
香物鉢は、小鉢を用いることが多く、
しかも侘びた風情のものが好まれるのだとか。

また、香の物が取り易い様に、
口縁が反った端反形が多いそうです。

香物鉢の代表的なものとして、
古染付雁木鉢・御本刷毛目鉢・伊賀沓鉢・
唐津沓鉢・黒織部沓鉢・唐津片口・
黄瀬戸銅鑼鉢・三島や南蛮編笠鉢などがあるようです。

■古くは引重(ひきじゅう)
むかしは「引重」と呼ばれる二段重ねの塗箱を用い、
上の重に香の物を、
下の重に焼物を盛り付けたみたいです。

かつては「香の物」が主菜にも数えられ、
向付・煮物・香の物で一汁三菜ともされたものを、
余りに淋しいということで、引重を用いて、
主菜の香の物を上の重に入れ、
それに添えて下の重に焼物を入れて出すようになったようです。

その後、焼物が主菜になって、
引重に替り皿鉢を用いるようになり、
香の物も付け合せていたものが、
香の物を湯桶を出すときに、別に鉢で持ち出すようになっていくとか。

現在でも、朝茶や極侘びの茶事では焼物が省かれ、
煮物までを主菜として、
初献のすぐ後に香の物を出して客に預けることもあるそうです。


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